私が最近読んだ本の中に、「随筆とは、事象と心象が交わるところに生まれる文章。人は旅行などで事象に触れて心が動き、書きたくなる気持ちが生まれる。それが心象である」との記述があった。う~む、当ブログはそれを普段から、自然体で行っているつもりなんだが。今回はこの点にさらに重きを置き、書いてみました。今回は斜陽の三陸は釜石、でも訪れてとても好きになった。そんな内容です。チカラ、入ってますよ・・・と、さてさて。
八戸から三陸に出張②ドーミーイン本八戸近くの「らぷらざ亭」で海の幸をの続きを。2019年8月の出張旅ですね。
八戸から東北新幹線で新花巻へ。そこからこの110系気動車、釜石線の快速「はまゆり1号」で釜石へ。
釜石の位置関係。三陸、宮古の南ですね。
釜石に到着。駅の向かいには、日本製鉄釜石製鉄所が。うお・・・これがかの、新日鉄釜石か?!突然のドラマティックな展開に驚く。昭和の時代に言われた言葉、「鉄は国家なり」が頭をよぎるな。
さて
これまで私は、三陸ではいろいろなところへ泊った。久慈、宮古、大船渡。志津川。釜石へも何回か訪れたが、釜石は震災前から宿泊インフラが貧弱で(失礼!)、泊まる気にならなかった。そんな中、ついに釜石初宿泊。期待が高まる。。。
今日の宿。釜石駅前・日本製鉄釜石の向かいにあるホテル。ホテルフォルクローロ三陸釜石。JR東日本系のきれいなホテル。部屋もいい感じ。期待が高まるが、夕食を食べる施設がないと。う~む。ネーミングにプラスα感があっただけに、少し残念に感じたな。
しかも・・・驚いた。聞けばこのホテルの周辺つまり釜石駅前は、夕食を食べる場所が「全く」存在しないことが判明(正確には一か所なくもないが、この日は休み)。仕方ないので、雨の中を少し歩いて街中へ。
その前に三陸鉄道の釜石駅へ。明日乗る予定の宮古行き列車の切符を入手。今となっては珍しい、昭和の香りがする紙の切符。実にノスタルジック。いいな。
観光案内所で教えてもらった「丸藤」という小料理屋のカウンターへ。刺身をいただく。マグロ、サーモン、スルメイカ、メカジキ、ヒラメ、カンパチ。マグロとサーモン以外は地のもの。脂の乗り具合が良く、味が濃い。最高だった。
お店の今年70歳という大将は話好きな人、色々と語ってくれた。曰く、以前は漁師をやっていてトロール漁船を持っていた。そのトロール船でブラジルまで行き、数年間漁をしたこともある。その時はパナマ運河で1ヶ月足止めを食らい、到着まで76日もかかった。
大将の子供の頃。釜石は新日鉄釜石でもった。街には人が多かったが、今は街を歩いている人の数が本当に少ない。釜石は新日鉄釜石の高炉の火が消え人員削減が進むと、つれて人口もぐっと減少し、街全体が廃れてしまったと。そうか・・・かつてここは、企業城下町だったんだな。
釜石の人口は1960年に9万7,000人だったが、現在は3万5,000人割れと減少した。新日鉄釜石のピーク時社員数は約8,000人、これが今は310人と10分の一以下。下請けや関連会社の数もピーク時は150社を数えたというが、それもほぼなくなった。
かつての新日鉄釜石は、日本の高度成長時代の象徴といえた。1960年代の東京オリンピック景気で建設需要が高まり、釜石は東北有数の重工業都市だった。しかし73年の第1次オイルショックがきっかけで、一時はトヨタを凌駕する規模を誇った「鉄は国家なり」の新日鉄は78年以降、4度の「合理化」を余儀なくされる。そして87年の5月頃、最悪の事態を迎える。「高炉の火が消える」との記事が新聞一面に。
覚えてる‥というか私は、これを忘れることができない。そして89年、高炉は停止した。新日鉄釜石の社員ひいては釜石の人たちは、どれだけ絶望的な気持ちになったことだろうか。察するに余りある。これに2011年の東日本大震災が追い打ちをかけた。兵どもが夢の跡という言葉を思い出す。切ないな・・・
そして人員整理
さて
これまで書いた通り。人口がピークから三分の一に減少してしまった釜石。斜陽と言う言葉がドンピシャ、いいところがまるでないかの如きだが、私は決して嫌いではない。いや、来てみてむしろ、釜石が好きになった。何故か。懐かしさ、ノスルタルジー、昭和の時代の覇者のまぶしさとその後の衰退。宴はいつか終わるというはかなさ。そんなあたりを釜石はしみじみ、感じさせてくれたからだと思う。
釜石の人の心の中には、常に全盛時の新日鉄釜石があるのではないか?それは鹿児島の人の心に、常に西郷隆盛と桜島があるように。いささか一方的だが、そんな想いが頭をよぎった。
現在、廃炉となった高炉の一部は、火力発電所に代わっている。かつて煙を出していた高炉は、今は発電所が時折、水蒸気を出している。それを昔の高炉と重ねている釜石市民も多いのではないか。少なくとも筆者は、発電所と高炉が重なって見えた。もちろん、かつての高炉を実際に見たことがあるわけではないが。
さて、今日は三陸の出張旅3日目。疲れがたまっているので、早めに床につくことにしようかな。明日は宮古に向かいます。